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第九話 涼子、諦める
最近涼子の店にいる頻度が上がった気がする。前はほんのお手伝いっていう程度だったのに、今では頼れるアルバイトというくらいの存在感がある。
気になったので涼子が私の部屋に遊びに来たタイミングで聞いてみた。
「ねー、りょうちゃん。最近店の手伝いすること増えてるね。学校のこととかしなくていいの? なんかあった?」
「……マコトにはなんでも見抜かれちゃうね。うん……実はさ、調理師専門学校辞めようと思うんだ……」
「エッ!? なんで? 頑張ってたじゃん」
「ん~~。確かに頑張ってたよ。でもね、もうムリ、ついてけないの。私だけ無様なくらい技能が足りないの。クラスに私1人だけ。ぜんっぜん技術が追いついてないの。当然私1人のために待っててくれるわけもなく置いてけぼり。自分で自主練してもだめ。全員自主練してるんだもん。永遠に追いつかない。…………もう、嫌になっちゃって……。 もう やめたいの」
そう言う涼子の顔は涙こそ出ていないが、とてもとてもつらそうで。無念そうで。かわいそうで。私は、うん。うん。と同意するしかなかった。
「情けないよ……。私がわがまま言って入れてもらった学校なのに、1年ももたずに辞めたいだなんてさ。こんな根性なしな自分は嫌いだよ。でも、でも……」
「いい、いいから、半年以上頑張ったじゃん。ずっとつらかっただろうに、言い出さずによくやったじゃん。もういいって。私と一緒に、麻雀…やろう?」
「うん」
こうして、涼子は調理師専門学校を辞めて家業を継ぐ道を選んだ。
◆◇◆◇
52.第七話 押し引きとはリスペクトである 早遅切り替えの時間になりカー子とキュキュが出勤してきた。私は引き継ぎの時間の店内清掃をしていたので涼子が二人と話していた。と言ってもホウレンソウ(報連相)するような重要なことは起こっていないと思うけど。「おはよ。今日どーだったー? 責任者としてなんか困ったことがあったとか、トラブルとか、連絡事項ありますカー?」「いやー、暇だったからトラブルとかはなかったよ」「そっカ……」「ただ、マコトとマタイさんの麻雀を見てて学んだことはあった。なんていうか、お互いに敬意を払った麻雀をしているな、という感想」「敬意?」「そう、敬意。つまりリスペクト。この相手だからこその選択というか、ここでのベストは数学的ベストとは違うというかね……言ってみれば『押し引きとはすなわち敬意』ということ。最適な敬意を込めた押し引きこそを最適解であるとし、数はその答えを出すためのひとつの情報に過ぎないということを二人の麻雀を見て気付かされたわ」 へぇ~。という顔をしたものの所詮は素人のカー子とキュキュにはその涼子の言う敬意を込めた押し引きとはなんなのかいまいちよく分かっていない様子だった。そう顔に書いてある。正直、私もへぇ~と思った。涼子、そんなこと思ってたんだ。(二人ともわかりやすいな。顔に『わけわからん』って書いてあるよ)と思ったのか、涼子は二人にさらに説明をした。「例えばこれは昨夜あったことなんだけど、マコトは赤伍使いのタンピン系大物手を張っていました。ミズサキ手牌 ドラ7赤伍六七⑤⑥⑦4556688 こんな手。ちなみに親からリーチが入っており、マコトはテンパイ直前に親に4索を打たれてすり抜けられてます。 となるとこの手、
51.第六話 マタイの戦略 白ポッチ(永遠制)のルールが面白いとマタイさんが言うので、その時はマタイさんしかお客さんがいなかったのもあり、今夜は白ポッチ永遠制の三人麻雀であと一人来るまでの暇つぶしをすることにした。「ルールはどうします?」「おれ、三人麻雀って全然知らなくて。三人麻雀の正式ルールを1から覚えるのは面倒だから普通の麻雀を三人でやる方式をとって欲しいな」「わかりました。それはありがたい申し出です。りょうちゃんも私も実を言うと三人麻雀には明るくないからその方がいいもんね」「そうね」 マンズの2〜8を抜くやら、最後まで取るやら、35000点スタートやらのルールは不採用とし、私たちは三人で四人麻雀をやった。「ツモった時の点数はどうしよっか」「『損する』でいいんじゃない?」「分かりやすいからそれがいいか。じゃ、それで」──── 私たちはいい勝負をした。実力で劣る涼子もこの日は勝負手がどんどん入る展開で強かった。 私とマタイさんは涼子の先制攻撃を受けつつの反撃をするパターンがほとんどだったが、私は反撃するのは得意な方だ。むしろ反撃する時こそ麻雀っていうか、戦ってるっていう実感が楽しいっていうか。そういうのわかる人もいるよね? マタイさんは先制攻撃されるのは嫌らしく、本当に嫌そうにしてたけどそれでも要所要所でキチンと反撃を決めてた。 そしてたまに出る白ポッチツモ。これが楽しい。 もはやリーチをする大きな理由の一つとして(白ポッチがまだあるな)というのも含まれるような状態であった。それくらい、白ポッチでアガれるということはテンションが上がることなのだ。少なくとも私と涼子にとってはそうだった。 その私たちの心理状態をしっか
50.第伍話 雀荘遅番の醍醐味 今日は展開的に私が立ち番になって涼子が卓に着いてた。 涼子vsマタイ 私はその戦いがよく見えるよう二人の間に位置取りして二人の麻雀を観戦することにした。 なお、本日は特別ルールの日。というのも、私たち遅番はカー子に全てを任されており、地球の麻雀がどのようなルールなのかも学びたいということで、10日に一度はスノウドロップの正式ルールではない特殊ルールの日を設けるという話に決まったのだ。 ちなみに、マージに週や月や年という概念は存在せず、ただ日数だけがあるので週に一度休むとか、そういうのは地球の知識があるカー子とキュキュにしか通用しない考えで、基本的には10や5を丁度いい区切りとして考える文化が浸透していた。 そんなわけで今日は特殊ルール『白ポッチ(永遠制)』の日。 白ポッチ永遠制とは。 『白』に1枚だけ赤い丸を彫ってある牌が投入されるルールを『白ポッチ(しろぽっち)有りルール』と言います。この牌はリーチをかけた時だけ発動する条件付きジョーカーのようなもので、基本はリーチ一発で引いた時だけのオールマイティ。はっきり言ってあまり気にしなくていい。 しかし、永遠制となると違う。白ポッチ永遠制はリーチ後ならいつ引いてきてもその牌でアガリと認めるというルール。これだとけっこうプレイヤーもその牌の存在を気にしながら打たねばならない。今回はそれでやろう、ということ。「白ポッチ牌は私が作っときました」と言って涼子が見せたのは牌の中心にマジックで描いた赤いハートがあり、それが消えないよう上にテープを貼り付けたものだった。「本当は彫ってあるものなんだけど、大変だし、それだと一度作ったら直せないからね。これをリーチ後にツモってきたらアガリと認めます。今夜はそういうルールでやりましょう」 そう言って始まったゲーム
49.第四話 鬼と悪魔の攻防 初日が問題なく終了し、カー子たち早番と入れ替わりの朝が来た。「おはヨー」「おはよう。初日はどうだった?」「あ、カー子、キュキュ、おはよ」「もうそんな時間だったの? 全然気付かなかった」「これ、音の鳴る目覚まし時計。今買ってきたんで、持って帰ってくだサイ。初日の仕事は何か報告することとかありましたカ?」「目覚まし時計ありがとう! 報告はとくに無いけど、マコトとマタイさんの攻防が面白かったとだけは伝えときます」「ドユコト?」「うん、この二人本当にすごくて……。ノートに書いたから読んで欲しいんだけど、日本語って二人は読めるのかな?」「モチロン」「余裕だよ。神と仙人だからね」「そう、じゃあこれ見て」 そう言って涼子は二人にノートを手渡した。それにはこんな事が書いてあった。◆◇◆◇ 南3局マコトは40900点持ち二着目の南家。全員の持ち点はこう。東家 マタイさん 17300南家 マコト 40900西家 カルケヤさん 41100北家 ロッジさん 700 そこで親のマタイさんが混一色トイトイの仕掛けをしている。ドラは北。 親は鬼のように強い戦略家のマタイさんだ。この点差でこの仕掛けなら捨て牌全体図から読んでも6000オールクラスでまくりに来てるとは私にも想像はつく。 つまり当たり牌最有力候補はドラの北。混一色トイトイドラドラを強引にドラツモしてやるつもりなのだろうと予想。 そして飛び寸前の北家ロッジさんは1枚でもドラを持っていれば絶対に永遠と持ち続けてテンパイ寸前ま
48.第三話 ミズサキによる福思書「すごいですね。マタイさん」「何が?」「いや、麻雀うますぎますよ。マタイさんみたいな上手な人がいるなら私たち来る必要なかったのでは?」「……どの場面を見てそう思ったのか分からないけど、買いかぶりすぎだよ。それにおれは説明が苦手だし、恥ずかしながら、文字も……その、書けないんだ」「あ……そーいうことでしたか……」 文字が書けないは想定外だった。聞くとマタイさん世代のクリポン族は基本的にものを書く文化があまりなく、そのような学習を受けずに育つのが一般的だったのだとか(現在は違う)。 それはそれでいいとは思うが、他人に麻雀を教える上で筆記はなくてはならないものと言ってもいいのでカー子たちがマタイさんを頼れなかった理由が理解できた。「とは言え、やっぱり強い人がいて良かったね。ねっ、りょうちゃん」「そうね~。なにより強い人と麻雀する時が結局一番麻雀が面白いからね」「エッ!」「何よ?」「いや、りょうちゃんから『麻雀が面白い』なんて聞ける日が来るとは思わなかったなって」「そんなこと言ってないでしょ」「いや、言ったよ。間違いなく言ったって。賭けなきゃ面白くないみたいなこといつも言ってたくせに。強い人と打つのが結局一番楽しいんじゃん♪」「聞き間違いでしょ」「照れないでいいってー♡」「ハハハ! 二人は仲が良いんだな」「これからよろしくな、お二人さん」 とまあ、そんなこんなで私たちは賑やかに遅番初日を開始した。 うるさいとか言われるかと思ったけど私たちの可愛さゆえかお客さんみんな歓迎してくれて一緒に笑いながら初日を楽しんだ。でも、笑ってばかりもいられない。私は依頼されて来
47.第二話 ノータイムのマタイマタイ手牌 東1局8巡目 親番 ドラ②二二赤伍六六七七(西西西)(北北北) ここにツモ四萬と引いた時、あなたならどんな反応をするだろうか。ツモ切りか? それでもいいだろう。むしろそれはマジョリティな選択であると思われる。そもそもこの手はホンイツトイトイを目指して鳴き始めたのだ。四萬に用はない。 しかし、このマタイというクリポン族の男はノータイムで打七萬としたのである。(なるほど、3面待ちへの変化を見た1手というわけね。よく考えたらたしかにここは七切りが良いように思える)と後ろ見していた私も思ったし、それが正解ではあるのだが、特筆すべきはその七切りの理由である。というのも――「ツモ!」二二四赤伍六六七(西西西)(北北北) 伍ツモ「2600オール」 これである。つまり、伍萬でのツモアガリを想定した※点パネ期待。ここに着目してマタイは四萬を採用したのだ。 マタイ曰く、この卓のメンツは強い。オタ風のポンを2つ見せて親のホンイツ仕掛けにこれ以上鳴かせたり放銃したりするような相手ではない。この手はもう※ツモ専となったようなものだ。だとしたら伍ツモの時に打点が上がる選択をするのが正解だと思った。自力でトイトイをつけてさらにアガるなんてのは夢物語もいいとこだが、自力伍萬ツモならリアルにあり得る。と。そういうことらしい。 なるほど納得。相手をリスペクトしているからこその選択というわけだ。 また、数局後にこのような手牌になった時もすごかった。マタイ手牌 4巡目 ドラ北三六七八①②⑤⑤⑥12789